飯星 淳一(いいほし じゅんいち)さん
農園名 | 飯星オーガニックファーム |
栽培品目 | ニンジン・リーフレタス・ミニトマトなど |
有機農業のふるさと・山都町で有機農業を営む飯星さん。九州山地に囲まれた中山間地で、奥様・直子さんとニンジン・リーフレタス・ミニトマトなどを季節に応じて栽培されています。糖度の高いこのニンジンのつくり方や、農業への思い、これからの夢などをうかがいました。
野菜を極めるならやっぱり有機栽培
うちは父が30年以上有機農家をやっているので、自分もなんのためらいもなく同じ有機農家になりました。父は米や玉ねぎ、ホウレンソウなどを栽培していて、僕は別にほ場を持ってニンジンなどを栽培しています。
父がつくった野菜を見て、味も栄養も有機野菜のほうが良いことを知っていたので、やるなら有機栽培でというのは最初から決めていました。僕のなかでは美味しくて、栄養価の高い野菜を極めたいなら、やっぱり有機ですね。糖度の高さ、ビタミンの豊富さ、抗酸化力どれも優れていると思います。
特にBLOF理論*1を取り入れてからは、野菜のできがよくなりました。大きさにバラツキのないニンジンができるようになり、収量も上がり、味・栄養価も向上しました。
ふかふかの土づくりはパンづくりと同じ
ほ場で取り入れているBLOF理論では、アミノ酸やミネラルが野菜の栽培に大切だといわれています。人間の体づくりにも、肉(アミノ酸)と野菜(ミネラル)とごはん(炭水化物)が必要なので、生き物に必要なものは変わらないんだなと思います。
その土壌にあった堆肥や菌を入れておくと、パンづくりのように発酵してふくらんで、軟かくてふかふかの土になります。発酵という点で、土づくりとパンづくりは同じですね。ここは中山間地で平地に比べ日照時間が少ないので、炭水化物の量を工夫しています。
僕たちのほ場のもう一つの特徴は、土づくりや除草に太陽熱養生処理を取り入れていること。これもBLOF理論からの方法なんですが、雑草が生えるのを抑えることができます。
こんなふうにほ場に合った土づくりを考えるのは、楽しいですね。なかでも土づくりをして種や苗を植える頃が、一年で一番ワクワクします。今年はどんな野菜ができるのだろうって。
一日一日の経験をどう活かすかが大切
農業で大切なのは、経験したことをいかに次に生かすかだと思っています。特に今年(2020年)はおかしな天候でしたが、僕たちに天気はどうしようもできない。でも、その後に対応することはできるんですね。なにか起こってしまった後の対応によって、野菜の収量・できが決まってきます。大雨が降った後だけに注目するんじゃなくて、年間を通してしっかりと対応していくことが大事だと思います。
どう対応するかは、日々積み重ねた知識と経験の量だと思うんです。毎日ちょっとした変化も蓄積して、対応力を上げて、いざとなったら使えるようにしています。
失敗も、成功も、どっちも覚えておいて次に活かす。それが農業でうまくいくポイントなんじゃないかなと思います。70歳のベテラン農家さんでも同じ作物なら50回程度しか経験できないのだから、ちょっとした経験も記録してその後に役立てたいですね。
レベルの高い野菜を追求していきたい
ここ数年、鹿や猪に野菜を食べられたり、ほ場を荒らされたりするようになりました。鹿・猪以外にもいろんな動物が出てくるので、いろいろと対応しないといければ。鳥獣害対策がこれからの課題の一つです。
一方では、自分がつくりたい野菜ができるようになりました。将来的にはどこよりも濃くて甘いニンジンを作りたいと思っています。目標は小さな子どもから年配の方まで、多くの人たちにうちのニンジンを食べてもらうこと。旬の時期のニンジンの甘さ、香り、柔らかさは最高ですよ。
そのためにもっともっと、高品質で高栄養価の野菜をつくることを追求していきたいと思っています。
*1 BLOF理論とは、アミノ酸・ミネラル・炭水化物のバランスを考え、太陽熱養生処理等の方法を用いて行う生態系調和型農業理論のこと。興味のある人はこちら http://www.japanbiofarm.com/report/entry-354.html
くまもと有機の会の宅配や店舗など。くまもと有機の会では、熊本市内宅配や県外発送などを行っているので、興味のある人はぜひ。