河野果樹園　河野大樹さん（宇城市不知火町）

河野 大樹（かわのだいき）さん

農園名	河野果樹園
栽培品目	温州ミカンなど

不知火町大見地区にある約115aの土地でミカンをつくっている河野さんは、有機農業農家1年目の超若手（2020年現在）。奥様の裕子（ひろこ）さんとも温州ミカンを通じて出会い結婚したのだとか。そんな2人がつくる河野果樹園のみかんの特徴は、甘みと酸味のバランスがよく水分たっぷりなこと。この美味しいミカンの栽培方法や、河野さんご自身についてお話しをうかがいました。

ミカンが大好きという気持ちが原動力に

ここ不知火町はミカンなど、柑橘類の栽培が盛んなところ。柑橘類の栽培には日当たりや風通しがよく、水はけのよい土壌といった環境が必要なので、不知火はぴったりの環境といえます。僕のほ場からも不知火海が望め、天気がよい日は海からの風も心地よく気持ちがいいですよ。

もともと父親が農業をやっていたので、僕はごく自然な流れで農家になる道を選びました。そして、妻の裕子は毎日食べても飽きないほどミカンが大好き。大学で出会ってすぐに意気投合、2人でミカン農家を目指すようになりました。今つくっているのは、ひのさやか、ひのあかりといった極早生。9〜10月が最盛期です。

よく「好きだけじゃやっていけない」という話を聞きますが、僕たちは行き詰まったときには、“好き”という気持ちが大きな原動力になっていますね。大好きという気持ちがあるからこそ、美味しいミカンができたときは、コレだ！という達成感も味わえます。

木の半分だけ剪定する農法を導入

河野果樹園の農法の一番の特徴は、木の半分だけ実をつけさせるということです。一本の木を正面から見ると、左右の片側だけに実がなっていて、反対側は実がないことがわかると思います。

この方法は、研修先の菊池農園で学んだ農法。果実には2年に1度生り年*1（なりどし）があります。その特性を利用し、木の半分だけ枝を剪定し実がならないようにして、残り半分にたわわに実らせる。休ませている半分は剪定することで若返り、翌年美味しいミカンを実らせてくれます。また、気が若返ることで、虫がつきにくくなるというメリットもあります。

多くのミカン農家さんは、枝を剪定することに抵抗があるかもしれません。でも菊池農園では、毎年半分剪定することで美味しいミカンを収穫する農法で成功されていました。この農法を僕たちも取り入れています。

※1 果実は1年ごとに実がたくさんなる年と、あまり実らない年が交互にやってくる。このうち実がたくさんなる年を「生り年」という。

自分たちが楽しく継続できる環境が大切

作業を行う上で大切にしているのは、自分たちが作業しやすい環境かどうか。生活のリズムや体の大きさに合わせて、ほ場をつくっています。

例えば、新しく苗を植えたところは高さ1m 、幅4mになっていて、腰をかがめず作業ができるようにしました。この他にも、自分たちでユンボを入れて歩きやすいように道をつくったり、疲労軽減のためにフォークリフトを購入したりしました。

農家というと朝早くて大変・・・というイメージもあるかと思いますが、そこも僕たちはマイペースに、時間にもなるべく縛られずにやっていきたいなと思っています。何十年も農作業を続けていくのですから、体が資本。無理のない環境で、楽しく働ける工夫をしていきたいと思っています。

美味しいミカンづくりを極めたい

できたばかりの河野果樹園ですが、目標はどこよりも美味しいミカンをつくること。研修先を菊池農園に決めたのも、食べてみてその甘さ、瑞々しさ、まろやかな味わいに惚れ込んだからでした。

ミカンって、美味しくて、安くて栄養があって、気軽に食べられますよね。このミカンのよさをもっと多くの人に知ってもらいたいんです。そのためには、美味しいミカンをたくさんつくること。「河野果樹園のミカンって美味しいよね」と思ってもらうことで、さらにミカンのファンもつくっていきたいです。

今年は400本の新しい苗を植えたので、4年くらいするともっと多くのミカンを収穫できるようになります。美味しいミカンをつくり続け、ミカンづくりを極められたらと思っています。これからの河野果樹園にご期待ください（笑）。

河野 大樹さん プロフィール
宇城市不知火町(旧宇土郡不知火町)出身。柑橘類の農家である父親の畑を見て育ち、農業に興味を覚える。大学では農学部に進学、そこで奥さんの裕子（ひろこ）さんと出会う。その後愛媛県の菊池農園にて、２年間ミカンの有機栽培の研修を受ける。2020年夫婦で新規就農し河野果樹園設立。