YASKI FARM 鳥越 靖基さん(上益城郡山都町)

2021 2/24

鳥越 靖基(とりごえやすき)さん

農園名YASKI FARM
栽培品目ピーマン、ニンジン、ダイコン、タマネギ、米など

山都町で有機農業をスタートして、7年目という鳥越さん(2020年現在)。
農業だけでなく、音楽や地域おこしなど、多彩な活動をされていらっしゃいます。どのように野菜をつくられているのでしょうか。また、目標とすることとは?

この土地の土・太陽・水を活かした農業を

僕が住んでいる山都町は、阿蘇外輪山の外側に位置する中山間地にあります。その中山間地特有の気候や豊かな水・土を利用し、現在は4haほどのほ場でピーマン、ニンジン、ダイコン、タマネギ、米などをつくっています。

春は苗の準備や春野菜の収穫、夏はピーマンを育てニンジンの種をまく、秋はお米を収穫しダイコンやカブを植えます。そして、厳しい冬にはニンジンやダイコンを収穫。風通しのよい寒さを利用すると、糖度の高いニンジンやダイコンになります。

また、湧き水には鉄分*1が多く含まれているので、作物が元気に育つ。土壌も火山灰を含み、ミネラルが豊富なので、野菜が美味しくなる。山都町の豊かな気候や土壌を感じながら、持続可能な農業をやっていければと思っています。

養分の多い土壌
ピーマンの様子を見る鳥越さん

「半農・半音楽」でなく「全農・全音楽」を目指して

東日本大震災 3.11の前まで、僕はミュージシャンとして東京で生活をしていました。しかし、震災を経て、テーマとする持続可能な豊かな社会は音楽だけでは実現できないと感じ、東京からの移住を決意。食べ物をスーパーで買うという「誰かにしてもらっていた人生」を、もう一つ進んで自分でつくる人生にしたいという思いがありました。

そのなかでも熊本を選んだのは、緑に勢いがあったからです。熊本の農地や山の緑に大きなエネルギーを感じたことが、熊本移住の大きな理由でした。さらに、お米や野菜がとても美味しい。この場所で農薬や化学肥料を使わずに農業をやって、音楽活動も続けたいと思い、バンドのメンバー岸さんたちと移住を決めました。

農業・音楽どちらも片手間でなく、全力でやりたいと思っているので、「半農・半音楽」でなく「全農・全音楽」が僕たちの目標です。

南外輪山にかかる虹
YASKI FARMの仲間

農業と音楽は調和と創造が大切

今、取り組んでいる農法はBLOF理論*2をベースにしたこの土地にあった有機農法です。基本の肥料はカヤで、プラス地元の鶏糞や馬糞の有機肥料を適宜加えます。肥料は土壌分析を行ってから様子を見て、足したり引いたりすることも。ほか、竹の粉なども使っています。

僕の農法では、除草剤をまいたり積極的に草を抜いたりしないので、一見すると草がボウボウです(笑)。ピーマンは、低段密植といって短期栽培を繰り返す方法で露地栽培しています。さらに通路の草に野菜を断熱してもらっています。これらの方法でほ場の土壌はとても豊か。光合成細菌や納豆菌、乳酸菌などいろんな微生物が存在し、病気に強い美味しい野菜が育ちます。

農業は日々、土壌など周囲とのバランスを考えなければならないこと、また新しいことを考えていかなければならないところなどが、とてもクリエイティブでハーモニーが大切な仕事だと感じています。今までやってきた音楽と、新しく仕事に加わった農業。一見まったく違う仕事に思えるかもしれませんが、僕はとてもよく似た仕事だと思っています。

水田とタニシ
草をあえて残す圃場で土の様子を見る鳥越さん

山都で未来をつくる仲間づくりを

僕たちがつくった野菜の多くは、関東や関西に出荷されています。最近はインターネット、中でもSNSからの注文も多いですね。SNSでは野菜の出荷のことに限らず、農業イベントの日程など、いろんなことを発信しています。

僕のテーマである持続可能な社会をつくるためには、それがどんなものなのか伝えていくことも大切だと思っているので、幼稚園、小・中学校、大学などからの農園見学やイベントなども受け入れています。また、農業団体「山都でしか」として、料理を食べながら音楽を聴いてもらうイベントなども実施。地元でできる形で、豊かで楽しいことをやっていきたいと思っています。

ここは、僕にとっては未来をつくる仲間づくりの場所。将来の農業の担い手を1軒でも増やしたいし、同じ思いで食べてくれる消費者さんも増やしたいし、やりたいことがたくさんあります。興味があれば、YASKI FARMに遊びに来てみませんか。

*1 鉄分がなければ野菜(植物)は葉緑素をつくることができず、光合成もできなくなります。青々とした野菜は鉄分が土壌に含まれるおかげともいえます。
*2 BLOF理論とは、アミノ酸・ミネラル・太陽熱養生処理(土壌)を考察しながら行う生態系調和型農業理論のこと。興味のある人はこちら http://www.japanbiofarm.com/report/entry-354.html

水分豊富なピーマン
料理と音楽を楽しむイベントで演奏する鳥越さんと仲間
YASKI FARMの野菜と出会えるところ

道の駅、ホテル日航熊本内レストラン「アソシェッド」など。ほかSNSなどで注文を受けることもある。

鳥越さんFacebook :
https://www.facebook.com/torigoe.yasuki

鳥越 靖基さん プロフィール
横浜市出身。東日本大震災の経験を経て熊本へ移住、新規就農を果たした。現在はBLOF理論をもとに持続自可能な農業を目指して有機農業に取り組んでいる。ミュージシャンとしても活躍中で、活動名もYASKI FARM。株式会社 山都でしか 取締役、ASO Gairinzan Organic 合同会社代表を勤めるほか、農業体験などのイベントなども行い、多方面に活躍している